第4章 井戸茶碗を作る
大名物の喜左衛門井戸を念頭においた最新作です。大きさはほぼ本歌に近く、約15.2㌢の8.7㌢です。重さは約
340グラムです(喜左衛門井戸は370グラムです)。見た目より相当軽い感じがします。
永らく井戸茶碗を作ってきましたが、写しを作ろうとは考えたことがなく、オリジナルの作品としての井戸茶碗に挑戦
してきました。井戸茶碗とは自ずと一定の方向性があり、様式がありますので、それに添って作っていけば井戸茶碗
になるということでやってきました。他の作り手と同様に自分なりの個性的な?井戸茶碗を作ってきたわけです。
下の茶碗のように長石釉のあまい焼きの縮れが出ているような作でした。本歌の井戸茶碗は灰釉がそこそこしっか
り焼けているのですが、長石釉のほうが作品の見た感じが柔らかく、魅力があるからでした。しかし全く本歌の井戸
茶碗の魅力とはほど遠いものでした。よく考えれば全く別のものを作っていたのでした。
この度、喜左衛門井戸を写すことに挑戦しました。写すにあたり・、釉薬をしっかりとかすこと、透明釉にしあげるこ
と・、他の井戸茶碗と違う喜左衛門井戸の特性を意識すること、等々考えました。
喜左衛門井戸の特性とは私の思いはこうです。筒井筒井戸、有楽井戸他とは明らかに作りがちがいます。・、他と
比べ柔らかく広がりを感じさせてくれます。・、口端の反り具合は他の井戸茶碗にないものです。・、腰の張り具合も
他とは位置が微妙に違います。腰の轆轤目もあくまでも柔らかです。・、作りが華奢な感じを受けます。優しく、柔らか
です。井戸茶碗としては異質かも知れない・、高台も他と違い傾斜がきつく脇は一気に削られています。・、胴にはく
っつきの火間が大小あります。釉薬は薄くかけられ、貫入の小さい部類でしょう。
釉薬は よく熔けていて、透明になっている。色は所謂枇杷色だと思いますが、あまりこだわらずに、透明釉が熔け
た結果でよいことにしました。・、梅花皮(かいらぎ)大小激しく、高台脇の半分が剥落している。これだけは無視する
ことにした。・、竹の節高台、兜巾はもちろんである。・、見込みはあくまで深く茶溜まりから一気に轆轤筋が立ち上が
っている。そこ以外はしっかり水引されている。
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